団体交渉の準備について

(質問)
 当社は、近々労働組合との団体交渉に臨みますが、団体交渉の準備等について教えてください。

(回答)

1 誠実交渉義務
 団体交渉において、使用者には「誠実交渉義務」が課せられています。
 すなわち、使用者には、労働組合の要求や主張に対して、回答や反論を行い、必要に応じてその根拠を提示する必要があります。
 しかし、労働組合と議論を尽くしても合意できない場合は、団体交渉を打ち切ることも可能です。議論を尽くさないまま、一方的に団体交渉を打ち切ると、不当労働行為になる可能性があるので注意が必要です。交渉事項にもよりますが、最低3回から4回の団体交渉は覚悟するべきです。

2 団体交渉の日時
 団体交渉は、準備作業が大切です。労働組合は自分の都合で日時を指定しているだけですので、準備が間に合わなければ「当社業務繁忙のため、○月○日○時を希望する。」などと回答することも問題ありません。
 ただし、あまりに先の期日を指定するのは、不当労働行為になる可能性があるので注意が必要です。
 また、労働組合は、団体交渉の開始時刻を就業時間内に指定してくることが多いのですが、これは明確に拒否するべきです。団体交渉は業務ではありませんから、就業時間外に行うべきであり、これを認めると、以後も就業時間内の団体交渉を認めざるを得なくなってしまう可能性があります。交渉時間については、2時間程度とするのが良いでしょう。

3 団体交渉の場所
 労働組合側は、会社内の会議室等を指定してくることが一般的ですが、会社の近くの貸会議室等で行う方が無難です。会社内で団体交渉を実施するリスクとして、大人数で大挙して来ることや、大声を出されるなどで会社業務に支障をきたす可能性があることのほか、要求が通るまで帰らないなどして、会社に長時間居座られるおそれがある等がその理由です。

4 団体交渉の出席者及び人数
 団体交渉に交渉権限のある者を1人も出席させないことは、団体交渉を無意味なものにしかねず、不当労働行為となる可能性があります。  
 よって、人事担当役員や人事部長の出席は必要になるでしょう。
 労働組合側は大人数を主張するかもしれませんが、不規則発言が増えるなど冷静な協議ができませんので、人数制限を求めるのが賢明です。

5 労働協約
 合同労組が一方的に労働協約を送り付け、労働協約の締結を求めてくることがありますが、決して拙速に締結してはなりません。労働協約は就業規則よりも効力が強く(労働組合法第16条)、締結には十分な検討が必要です。

6 その他の注意事項
 まず、団体交渉における双方の発言は、ICレコーダー等で必ず録音することが必要です。
 労働組合側が録音するのであれば、貴社も録音して良いですし、特に労働組合側が録音することを明示しなくても、貴社は労働組合側に無断で録音しても差し支えありません。
 次に、労働組合に資料を渡す場合には注意する必要があります。給与等に関する交渉の場合、経営に関する資料を説明の際に用いることがありますが、安易に内部資料を手渡すと情報流出のリスクがあります。資料の内容によっては、後で回収することを宣言して閲覧させるだけにするとか、交付する場合には第三者に開示しない旨の誓約書をもらう等の対応が考えられます。