スポンサーに対する事業承継

(質問)
 当社は業績不振から倒産手続を検討しています。
 しかし、幸いなことに、とある取引先がスポンサーに名乗り出てくださり、当社事業を引き継いでもらえるようです。
 そこで、スポンサーに対する事業承継の方法を教えてください。

(回答)

1 民事再生における事業承継の方法(再生計画案で会社分割を定める方法)
 民事再生において、スポンサーへ事業を承継する方法として、再生計画案において、①再生会社が新設分割により設立する100%子会社に事業を承継させ、②この100%子会社の株式を再生会社からスポンサーへ売却し、③株式売買代金を債権者への返済原資に充て、④再生会社は最終的に清算することを定める方法があります。 
 100%子会社の株式を売却する際、再生会社が債務超過であり、子会社株式の譲渡が事業継続のため必要である場合、裁判所は、株主総会決議による承認に代わる許可を与えることができます(民事再生法第43条第1項)。かかる許可を得ることで、会社法第467条第1項第2号の2に定める株主総会決議(100%子会社株式の売却に関する決議)は省略可能です。
 また、現金を対価とする吸収分割によりスポンサーへ事業を承継させることもあります。
 ただし、このような方法を定めた再生計画案が債権者集会で可決され、裁判所の認可決定を得た場合でも、会社法その他法令に定める会社分割の手続(株主総会の特別決議による承認、債権者保護手続、労働者承継手続、事前・事後の開示など)を省略することはできないことに留意が必要です。

2 破産、特別清算における事業承継
 会社の清算を目的とする破産、特別清算においては、会社分割などといった組織再編の利用は想定されていません。
 破産、特別清算においては、破産管財人が裁判所の許可を得た上で、事業譲渡の方法によるスポンサーへの事業承継は可能です(破産法第78条第2項第3号、会社法第536条第1項)。かかる事業譲渡を行うに際し、株主総会決議は不要です(破産法第78条第1項、会社法第536条第3項)。

3 まとめ
 倒産手続と一口に言いましても、破産、民事再生、会社更生、特別清算といった異なる手続が用意されています。
 貴社は、民事再生手続において、再生計画案に定める会社分割の方法等により、スポンサーへ事業を承継させることができます。
 また、破産、特別清算の精算書の倒産手続の場合は、破産管財人が裁判所に許可を得て、事業をスポンサーに売却する方法も考えられます。