役員への事業承継(親族外承継)の課題

(質問)
 当社は従業員20名の中小企業で、代表取締役である私の年齢は70歳です。
 私には息子がいますが、私の跡を継ぐ気は全くないようなので、当社の役員に会社を譲ろうと考えています。
 役員に事業承継する場合の進め方や課題を教えてください。

(回答)

1 親族外承継の課題
 事業承継は、さまざまな問題が次々と顕在化することが多いです。
 ましてや、親族内承継ではなく、親族外承継となると、想定されるさまざまな問題を事前にリストアップして、関係者や専門家を交えて事前に検討することが必要です。
 いわゆる親族外承継において、一般的に想定される課題は、次のとおりです。
 ①株式の承継方法(社長の株式を自己株式として会社が取得後、利益償却するかどうかなど。)
 ②事業用不動産の承継方法(事業用不動産は時価で会社が取得するかなど。)
 ③後継者の経営者教育
 ④社内のコンセンサス
 ⑤顧客・取引先の承継
 ⑥社長の退職金(社長へ税務上許容される限度額内で良いか。)
 ⑦代表取締役の連帯保証の処理

2 事業承継のスキームづくり
 社長及び後継者が、複数の専門家を交えて事業承継スケジュール表を作成するとともに、事業承継スキームの検討を行うことになります。
 株価が高い場合には、議決権なき株式を導入して、後継者の役員には議決権有りで配当劣後の株式を、社長の親族には議決権無しで配当優先の株式をそれぞれ取得してもらうなどといったスキームを検討することになります。
 また、後継者の役員が金融機関の連帯保証の承継を渋っているのであれば、経営者保証ガイドラインの利用が可能かどうか(ケースによりますが、優良会社でないとなかなか難しいのが現状です。)、一定限度の連帯保証の承継で金融機関が納得するかどうかの調整等を行ったりすることになります。

3 タックスプランニングの重要性
 事業承継においては、株式の生前贈与、売買、相続等、どのような手法で承継するかにより税金負担額が異なる場合があるので、タックスプランニングの事前検討が必要です。