当社では、譲渡制限株式について、株主Yから譲渡承認請求がなされました。
当社は、どのように対応すれば良いでしょうか。
(回答)
1 譲渡承認請求の記載内容の確認
特に中小企業においては、株式譲渡承認請求がなされたときに、会社にとって不都合な譲受人が登場するリスクを怖れて、慌てることがしばしばあります。
まず、譲渡承認請求書には、以下の事項を記載することとされているため(会社法第138条第1号)、貴社としては、記載に漏れがないか、また、記載内容を確認することになります。
①譲り渡そうとする譲渡制限株式の種類、数
②譲渡制限株式を譲り受ける者の氏名又は名称
③会社が承認をしない旨の決定をする場合において、会社又は指定買取人が譲渡制限株式を買い取るよう請求するときは、その旨
2 承認をするか否かの決定(2週間以内)
次に、貴社は、株主からの譲渡承認請求に対して承認するか否かを決定することになりますが、この決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の決議により行います(同法第139条第1項)。
貴社は、その決定の内容を株主に通知しなければならず(同法第139条第2項)、2週間以内に通知をしなかった場合には株式譲渡を承認したとみなされてしまいますので(同法第145条第1号)、注意が必要です。
3 会社による買取り(40日以内)
貴社が譲渡承認をしない場合には、貴社又は指定買取人により株式の買取りを行う必要があります(同法第140条)。
貴社が買い取る場合には、株主総会の特別決議が必要です(同法第140条第2項・同法第309条第2項第1号)。
そして、貴社は株主に対して、貴社が買い取る旨及び貴社が買い取る株式数等を通知しなければならず、譲渡承認しない旨を通知した日から40日以内にこの通知をしなければ、譲渡を承認したものとみなされますので(同法第145条第2号)、この点についても注意が必要です。
4 指定買取人による買取り(10日以内)
貴社は、指定買取人をあらかじめ定款で定めておくこともできますが(同法第140条第5項但書)、定めがない場合には、株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては取締役会)で決定します(同法第140条第5項・第309条第2項第1号)。
そして、指定買取人は⑶の場合と同様に通知を行うことになりますが、譲渡を承認したとみなされるまでの期間は、譲渡承認しない旨を通知した日から10日以内と短く設定されています(同法第145条第2号括弧書)。
5 売買価格の決定(20日以内)
最後に、株式の売買価格を決定することになります。売買価格は当事者間の協議によって定めるのが原則ですが(同法第144条第1項・同条第7項)、協議が整わない場合は、裁判所に対して価格決定の申立てを行うことになります(同法第144条第2項・同条第7項)。
この申立ては指定買取人からでも株主からでも行うことができますが、会社又は指定買取人が買い取る旨の通知をした日から20日以内に申立てをしなければ、供託額が譲渡代金となるため(同法第144条第5項・同条第7項)、注意が必要です。
6 まとめ
貴社は、Yからの株式譲渡承認請求に対して、承認するかしないかの決定をして、それを2週間以内にYに通知しないといけませんが、譲渡承認しない場合は、最終的に裁判所が決定した価格で会社又は指定買取人が買取りをしないといけなくなるリスクも考慮する必要があります。