取締役会決議に瑕疵があった場合、どのようなリスクがありますか。
また、その瑕疵は、是正できるのでしょうか。
(回答)
1 取締役会決議の瑕疵の例
ある取締役会決議の瑕疵のケースは、次のとおりです。
①決議の内容が法令・定款や株主総会決議の内容に反していた。
②招集通知期間が不足していた。
③取締役への招集通知に漏れがあった。
④監査役への不通知
⑤定足数の不足
⑥不十分な審議
⑦特別利害関係を有する取締役の参加による決議成立
2 取締役会決議の瑕疵
何らかの瑕疵がある取締役会決議は原則として無効となり、誰でもいつまででもこれを主張することができます。
この点、株主総会決議の取消しが、主張権者が限定されていたり決議から3か月以内とされていることと異なります。総会決議の場合は、無効(不備があまりにも重大)や決議の不存在(決議の手続が全く存在しない)でない限り、3か月経てば取り消されることはなくなりますが、取締役会決議は、理論上は何年たっても無効を主張できます。
ただし、軽微な手続上の瑕疵による場合やその他の事情によっては当該決議が有効と認められることもあります。例えば、取締役会の招集にあたり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠いていたケースで、「特段の事情のない限り取締役会決議は無効になると解すべきであるが、当該取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、当該瑕疵は決議の効力に影響がないものとして、決議は有効になると解するのが相当である」とした判例があります(最高裁判所昭和44年12月2日判決)。
3 取締役決議が無効になってしまった場合の法的効果
取締役会の決議が必要な業務執行を、決議に基づかず、又は無効な決議に基づいて行った場合、当該取引行為も無効となってしまうおそれがあります。
ただし、常に無効になるわけではありません。例えば、取締役会決議を欠いた重要財産の処分行為につき、判例では、原則として有効ですが、相手方が決議を経ていないことを知り又は知り得べかりしときは無効であるとされています(最高裁判所昭和40年9月22日判決)。
4 回答
貴社においては、取締役会決議に不備が生じないように最善を尽くすとともに、取締役会決議に何らかの不備があることに気付いた場合、再度取締役会を開催して適法に追認の決議をしておくことが望ましいといえます。