株主総会議事録作成義務違反リスク

(質問)
 株主総会議事録作成・備置義務に違反した場合のリスクを教えてください。

(回答)

1 過料の制裁リスク
 株主総会の議事については、議事録の作成義務があり(会社法第318条第1項)、株主総会の日から10年間本店に、その写しを5年間支店に備え置かなければならず(同条第2項、第3項)、株主、全債権者らの閲覧、謄写に供されることになっています。
 株主総会議事録の作成、備置義務に違反すると、100万円以下の過料の制裁リスクがあります。過料は刑罰ではなく、行政上の秩序罰です。
 過料の裁判は、代表取締役が裁判所に呼び出されることもなく、またその言い分や弁解を聴かれることもなく、一方的に裁判所によって出されるのが通常です。
 因みに、登記官は、過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、遅滞なく管轄地方裁判所に通知しなければならず(商業登記規則第118条)、その通報を受けた裁判所は、相当であると認めるときは、当事者の弁解等陳述を聴かないで直ちに過料の裁判をすることができることになっています(非訟事件手続法第164条)。
 ある日突然、裁判所から、「被審人を過料金○○万円に処する。本件手続費用は被審人の負担とする。」等と書かれた裁判書が送られてくる、という事態もあり得るので、注意が必要です。

2 登記への影響
 株主総会議事録は登記の際の添付書類となることから、実際の総会の内容と異なることが総会議事録に記載されていた場合には、総会の決議内容と異なった登記がなされてしまうリスクがあります。

3 決議の証拠になるものがない。
 株主総会議事録は、総会決議の成立や内容についての重要な証拠の一つとなるので、その不作成や内容の不備等により、決議の成立や内容が争われる裁判等において、挙証上の困難が生じるリスクがあります。

4 架空の議事録等による登記のリスク
 中小企業の中には、実際には適法に行われていない株主総会や取締役会の議事録あるいは就任承諾書などを作成して登記だけ済ませてしまうということもあるやに聞いたことがあります。
 しかし、これは紛れもない虚偽の登記申請行為であり、公正証書原本等不実記載罪に当たります(刑法第157条第1項、法定刑は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。過料の制裁どころか犯罪になってしまうので、このような安易な手段は絶対に採ってはいけません。