(質問)
当社は建設業を行っており、A社を下請としていたところ、A社の従業員Yが労働災害で死亡しました。
当社は、Yの遺族に対して、損害賠償責任を負うのでしょうか。
当社は建設業を行っており、A社を下請としていたところ、A社の従業員Yが労働災害で死亡しました。
当社は、Yの遺族に対して、損害賠償責任を負うのでしょうか。
(回答)
1 実質的な使用関係とは
建設業では、元請、下請、孫請といった重層的な請負契約関係が見られます。
元請企業と下請企業労働者の間には、本来は契約関係がありませんが、その間に、「実質的な使用関係」、「直接的又は間接的指揮監督関係」が認められる場合には、元請企業の下請労働者に対する安全配慮義務が認められます。
2 実質的な使用関係等が認定されるファクター
具体的には、次のとおりです。
ア 現場事務所の設置、係員、係員の常駐ないし派遣
イ 作業工程の把握、行程に関する事前打合せ、届出、承認、事後報告
ウ 作業方法の監督、仕様書による点検、調査、是正
エ 作業時間、ミーティング、服装、作業人員等の規制
オ 現場巡視、安全会議、現場協議会の開催、参加
カ 作業場所の管理、機械・設備・器具・ヘルメット・材料等の貸与・提供
キ 管理者等の表示
ク 事故等の場合の処置、届出
ケ 専属的下請関係か否か
コ 元請企業・工場の組織的な一部に組み込まれているか、構内下請か等が検討されることになります。
3 回答
貴社が現場事務所を設置して、従業員を工事現場に派遣するなどしていたり、貴社がYに対して、作業方法、作業工程について指示をするなど、Yに対して事実上の指揮・監督を行っているなどの事情があれば、貴社のYに対する安全配慮義務違反が認められるリスクは高いといえます。
貴社は、A社との間で労災があった場合の責任負担割合の事前合意をするか、労働災害総合保険等の労災上積保険の加入を検討すべきです。