所持品検査と監視カメラの設置要件

(質問)
当社では、従業員が倉庫内の商品を領得するという業務上横領事件を起こしたため、警察沙汰になってしまいました。今後、同様の犯罪を防ぐため、従業員の所持品を検査したり、職場に監視カメラを設置したりすることは可能でしょうか。 

(回答)

1 所持品検査
 所持品検査は、金品の不正隠匿を摘発・防止や、現金などの貴重品を扱う従業員が現金などの紛失等が発生した場合に、身の潔白を証明するための機会を保障するために行う必要が生じます。
 この所持品検査は、①これを必要とする合理的な理由に基づき、②一般的に妥当な方法と程度で、③制度として従業員に対して画一的に実施される場合に、④明示の根拠に基づくのであれば認められるとされています(最高裁判所昭和43年8月2日判決)。
 所持品検査が適法であれば、貴社はそれを拒絶した従業員に対し、懲戒処分を行うことが可能になります。

2 監視カメラの設置
 ビデオカメラやコンピューターによって職場内の従業員について、モニタリングすることについては、原則として、①その実施理由、実施時間帯、収集される情報内容等を事前に従業員に通知すること、②個人情報の保護に関する権利を侵害しないように配慮すること、③常時のモニタリングは労働者の健康および安全の確保又は業務上の財産の保全に必要な場合に限定して実施すること、④モニタリングの導入に際しては原則として労働組合等に対し事前に通知し、必要に応じ協議を行うことなどが要求されます。
 ただし、犯罪その他の重要な不正行為があるとするに足りる相当の理由があると認められる場合には、従業員への事前の通知等を行わず、監視カメラを設置できると考えられます。
 なお、以上の点については、個人情報保護法施行前の指針ですが、労働省(現厚生労働省)の「労働者の個人情報保護に関する行動指針」(平成12年2月)を参考にしています。

3 監視カメラと個人情報保護法
 監視カメラの映像により、特定の個人が識別できるのであれば、利用目的の通知、公表等(個人情報保護法第18条第1項)が必要となります。
 しかし、一般的に、防犯目的のために監視カメラを設置する場合は、個人情報の利用目的は、取得の状況からみて明らかであるので、利用目的の公表は必要ではないと考えられます(同法第18条第4項第4号)。

4 回答
 貴社が今後の防止策として、所持品検査を行う場合は、所持品検査を行う旨が規定されている社内規程に基づき、目的の合理性、方法の妥当性、画一的な実施に基づき、行うことができます。
 また、監視カメラの設置については、同じく、社内規程に基づき、事前に労働者や労働組合に通知した上で行うことができます。