当社の従業員Yが通勤中に痴漢で逮捕されました。
当社の初動対応はどうすれば良いでしょうか。
(回答)
1 事実関係の把握
従業員が逮捕された場合、会社から見ると、突然の無断欠勤という形をとることがほとんどです。この段階で、従業員の家族から逮捕されたということで会社に相談があることもありますし、逮捕の事実は伏せて、家族から病欠の連絡があることもあります。
会社が逮捕の事実を把握したら、まず、家族や弁護人から事情を聞き状況を把握することが先決です。また、接見禁止命令が出されていなければ、逮捕されている警察署の留置係に電話して、可能であれば面会に行っても差し支えありません。
2 弁護人との対応
弁護人から、身柄拘束を解くための資料として、会社関係者の上申書等の提出を依頼されることがあります。早期解決が望ましいと考えているのであれば協力しても良いところですが、重い懲戒処分を想定している場合には、ここで出した書面が懲戒処分の効力に影響を与える可能性にも配慮して検討する必要があります。
3 欠勤の処理
従業員の逮捕による欠勤は、労働者の責に帰すべき事由による労働義務の履行不能と評価されます。この場合、使用者に賃金支払義務は発生しません。
また、実務上、逮捕に伴う欠勤について、事後的に有給休暇を振り返る取扱いをすることがありますが、会社として重い懲戒処分を想定しているような場合には、懲戒処分の根拠として欠勤の事実を援用することになりますから、このような取扱いはしない方が良いと考えます。
4 懲戒処分
刑事手続においては、有罪判決が確定するまでは犯人として取り扱わないことが原則となっていますから(無罪推定の原則、刑事訴訟法第336条参照)、犯罪行為を行ったことを理由に懲戒処分を行う以上、有罪判決が確定するまでは処分を控えるべきです。
5 会社の予防策
会社は、従業員に対して、勤務時間外といえども犯罪行為を犯した場合に被るペナルティ等に関する研修を実施することが考えられます。
また、会社としては、従業員の勤務時間外の犯罪行為に対し、曖昧な対応ではなく、再度の過ちを防ぐため、認定した事実関係と処分に係る量定を記録に残すことも必要となります。
6 回答
貴社は、Yの弁護人を通じるか、担当者が自ら面会に行くかして、Yから逮捕事実に係る事実関係を確認することになります。
その上で、Yの欠勤の処理を行い、有罪判決が確定すれば懲戒処分を行うことになります。