効率の悪い長時間残業の是正方法

(質問)
当社は、3交代で製造ラインをフル稼働させていますが、製品の納期に追われることが多く、従業員は恒常的に残業していました。ただし、残業をするのが当然という感じで、生産管理や製造工程の効率化の工夫はあまりなされておらず、効率的に業務を行っている様子はありませんでした。
そのような中、労働基準監督署の立入り調査が入り、未払残業代支払と業務改善の勧告を受けました。
当社は、今後どのような方法を採れば良いでしょうか。

(回答)

1 時間外労働増加の要因
 中小企業は、いわゆる納期に追われることが多々あります。また、中小企業の中には、例えば、製品の生産システムが効率的でなかったり、上司が帰るまでは帰りにくいといった雰囲気があるなどさまざまな原因で、恒常的に長時間の時間外労働が存在することがあると考えられます。

2 割増賃金と附加金のリスク
 時間外労働等の割増賃金は、次のとおりです。
 ア 時間外労働は125%以上
 イ 深夜労働は125%以上
 ウ 休日労働は135%以上
 上記の重複の場合、例えば、時間外労働+深夜労働は150%、休日労働+深夜労働は160%になります。
 また、1か月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増が必要で、1か月60時間を超える時間外労働+深夜労働は175%以上の割増になります。
 以上のとおり、時間外労働は多額の賃金支払義務につながり、中小企業にとっては経営圧迫要因となります。
 加えて、企業が労働者から訴訟において残業代を請求されると、裁判所から附加金を命じる判決により企業が支払わなければならない額が2倍になるリスクもあります。

3 長時間残業のリスク
 長時間の残業には、メンタルヘルスのリスクが生じること、疲労による労災発生のリスクが高まること、未払残業代請求のリスクが高まること、労働組合の加入のリスクが高まることなどさまざまなリスクがあります。

4 不要な残業をなくすための対策 
 このため、会社としては不要な残業をさせないための体制の整備とルール作りを行うとともに、そもそも恒常的なダラダラ残業を発生させないような労務管理を構築する必要があります。
 また、部署によって残業の多い少ないの差異が生じているのであればそれを是正するための組織改革、業務処理方法の改善も併せて検討すべきです。

5 回答
 貴社は、今後、ラインの各責任者が生産管理をきちんと行って、ラインごとの生産性を数値で把握するとともに、夕礼の実施と残業による業務内容を明確にさせること、材料の機械への搬入距離の短縮等製造工程の全面的な見直し、残業を許可制にかからせること等を通じ、不要な残業を極力減らす努力を行うべきです。