当社の従業員Yが数年間にわたり合計約3,000万円の横領を行ったことが判明しました。Yは領収書の金額を改ざんするなどして横領を繰り返していたようです。
当社としてはどのように対応すれば良いでしょうか。
(回答)
1 社内犯罪の会社に与えるリスク
中小企業から経営法務の相談を受けていると、横領等の社内犯罪の対応にはよく出くわします。新聞等にはいちいち出ませんが、数的にはそこそこ多い中小企業の経営法務リスクといえます。
従業員の横領等により、会社資産と収益の減少、通常業務への支障、社会的信用の低下等のさまざまなリスクが考えられますが、やはり最も大きなリスクは、会社内で犯罪者を出してしまったことによる従業員の動揺、士気の低下、上司等の監督責任が問題になることであると考えられます。
2 社内犯罪の調査方法等
貴社は、Yが横領行為をしたという相応の情報を得た場合は、Yによる証拠隠滅行為を阻止する必要があるので、社内における設備、備品等(書類、パソコン、携帯電話等)をYが使用することをいったん禁止し、その上で、Yの業務に関連する書類やパソコン等を収集し、Yやその上司、部下その他の関係する社員に対して事情聴取を行います。
また、初期の段階で、Yが横領を自認するのであれば、後日供述を覆さないよう、始末書といった形でY自ら不正行為の内容を記述させ、署名をさせておくことが有効です。
3 告訴の要否
横領等は犯罪行為であることから、発覚後のYの対応(事実を否認している、確認作業に協力しない、被害弁償を行わない等の場合)や被害の実態、規模によっては、刑事告訴を検討する必要があります。
この場合、業務上横領罪を裏付ける証拠の入手と分析が必要となります。その上で、関係者やYから事情を聴くことになります。
Yが被害弁償をしてきた場合に、告訴するかどうかは難しい問題があります。告訴しないことを条件に、Yの親族が被害弁償の提案を行ってくることもあるので、ケースバイケースですが、会社とすれば、他の従業員に対して示しをつける意味でも、できるだけ告訴に踏み切った方が良いかもしれません。
最後に、貴社は、Yの横領の原因を分析して、今後、かかる横領等の犯罪が起こらないように犯罪の「機会」を断ち切るための体制を整えていく必要があります。
4 回答
貴社は、Yの業務上横領罪を裏付ける証拠の収集等を行うことになります。
そして、Yの横領が証拠上明らかになれば、Yとの被害弁償の交渉、場合によっては、Yの刑事告訴を検討することになります。