私の同僚は,業務時間外に他でアルバイトをしているようです。私も,今の給料で生活ができないわけではありませんが,小遣いを稼ぐために副業をしようかと考えています。
しかし,先日,上司から,当社では副業を禁止しているので,違反した者は懲戒処分もあり得るというような話がありました。
実際に副業が見つかった場合には懲戒処分の対象となるのでしょうか。
(回答)
1 副業は原則自由
公務員は法律で副業が禁止されていますが,民間企業には従業員の副業を禁止する法律の規定はありません。
就業規則に副業禁止を定めている会社は多くありますが,そのような定めがない場合には,原則として副業は制限されません。
また,就業規則に副業を禁止する定めを設けたとしても,常にその有効性が認められるわけではありません。契約で定められた就業時間外をどのように過ごすかについては,本来,各従業員の自由だからです。
2 副業禁止が認められる場合
副業の禁止が有効であると認められるためには,就業時間外の私的な行動を制限する合理性が認められる必要があります。
このような合理性が認められるのは,従業員の副業により,会社の社会的な信用や社内秩序を害されるおそれがある場合,秘密漏えいのおそれがある場合,当該従業員の労務提供に支障が生じるおそれがある場合等です。
そのため,就業規則で副業禁止を定めていたとしても,実際に副業禁止違反を理由として懲戒処分をするためには,上記のような合理性が認められるのかを具体的に検討する必要があるでしょう。
3 副業に関する裁判例
裁判例には,貨物運送会社に勤務する長距離トラック運転手が勤務時間外にアルバイトをすることを会社が認めなかったという事例で,副業終了後会社での勤務開始までが6時間を切る場合は副業を認めないことには,合理性があると判断したものがあります。
このケースでは,疲労や値不足での交通事故を起こせば,会社のみならず第三者に多大な迷惑を掛けるので,トラック運転手にとっては休息の確保が非常に重要であるというわけです。
その一方で,同裁判例は,休日のアルバイトを禁止することについて,その休日が法定休日であるということのみを理由として禁止することはできず,労務提供に生じる支障を具体的に検討しなければならないと判断しています。
近時,働き方の多様化が進み,本業とは別に副業をするサラリーマンも増えているようです。その一方で,会社からすれば,従業員には副業をせずに自社の仕事に専念してもらいたいと考えるのは当然のことです。
副業禁止違反を理由とする懲戒処分の有効性が問題となるケースでは,制限の合理性を具体的に検討する必要があります。