振込先を間違った!誤振込みの法律問題

(質問)
 ⅩはA名義の普通預金口座に5000万円を振り込むため,Y銀行B支店に振込依頼をしましたが,Ⅹは誤ってZ名義の普通預金口座を受取口座に指定しました。これにより,同口座に5000万円の入金記帳がなされました。Xは、これに気づき,金融機関に連絡しましたが,Zはすでに入金された金銭全額を引き出していました。
 この場合、どのような法律関係になるでしょうか。

(回答)

1 誤振込みの法律問題
振込依頼人が誤った口座を受取口座に指定してしまい、金融機関がこれに従って入金処理をしてしまったような場合を誤振込みといいます。最近では、ある自治体が住民に対して新型コロナウイルス対策関連の給付金を誤って振込んでしまった事件が話題となっていましたが、これも誤振込みの事例の1つです。今回は、誤振込みが発生した場合の法律問題について、お話しします。

2 受取人は誤振込みにより預金債権を取得する!?
振込依頼人の錯誤により誤振込みが生じた場合、受取人と金融機関は、どのような法律関係になるでしょうか。判例では、振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込みがあったときは、振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在するか否かにかかわらず、受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立し、受取人が銀行に対してその金額相当の普通預金債権を取得すると判断されています(最判平8・4・26民集50巻5号1267頁)。つまり、振込依頼人の錯誤により誤振込みが生じた場合、受取人は金融機関に対して預金債権を取得します。そのため、銀行実務では、振込先の口座を誤って振込依頼をした振込依頼人が、入金処理の完了後に申し出た場合、受取人の承諾を得て振込依頼前の状態に戻す手続き(組戻し)を行います。

3 振込依頼人から受取人に対する不当利得返還請求
誤振込みをした場合、組戻しができれば問題はありません。しかし、受取人が組戻しに応じなかった場合、振込依頼人は、受取人に対して、どのような請求を行うことができるでしょうか。確かに、受取人は振込金額に相当する預金債権を取得しますが、預金債権に相当する金銭的価値は、本来、振込依頼人に帰属すべきものです。そのため、振込依頼者は受取人に対し,誤振込みによって法律上の原因なく利益を受け、他人に損失を及ぼしたとして,不当利得返還請求をすることができます。
  ただし、預金を引き出されて、受取人にめぼしい財産がなくなってしまうと、強制執行が困難となります。そこで、予め、不当利得返還請求権を被保全権利として,預金債権の仮差押えをする必要があります。

4 受取人は刑事責任を負うか?
受取人は誤振込みにより預金債権を取得するとされますが、「振込依頼人が勝手に間違えたんだから、払い戻していいでしょ」とはいきません。受取人が誤振込みと知りながら払戻し等を受けた場合には、刑事責任を負う可能性があります。
誤振込みと知りながら、銀行窓口でその情を秘して預金の払い戻しを受けた場合、詐欺罪(刑法第246条1項),現金をATMから引き出した場合、窃盗罪(刑法第235条)、ATMで他の口座に振り替えた場合には、電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)が成立する可能性があります。
振込依頼人も、受取人も、誤振込みに気づいた際には、直ちに、金融機関に知らせて組戻しの手続きを採る対応が適切です。誤振込みに限らず、預金に関する法律問題も弁護士にご相談ください。

はじめに

これまでの諸団体の会報等を取りまとめたものです。
内容については個人的な意見であり,事実・不正を保障するものではありません。
あくまでも参考にしていただければ幸いです。


カスハラの問題点

(質問)
 最近、カスハラが話題となっていますが、会社としてそのことに備えた対策はどのようなことをすればよろしいでしょうか。

(回答)
 近年顧客からのハラスメントであるカスタマーハラスメント(カスハラ)が問題となっています。
 厚労省の調査では、カスハラはハラスメントの中で最も増加傾向にある類型です。

1 カスハラの影響と、カスハラ対応の難しさ
 カスハラは、加害者といえる人が会社外の人であり、カスハラそのものを防止することは究極的にはできません。
 そのため、実際にカスハラといえる事例が発生した場合に、どのように対応するか、会社の体制を構築することがカスハラ対策のメインとなります。
 カスハラは、従業員のメンタル面に悪影響を及ぼすだけでなく、特定の人のみに従業員が対応することとなり、他の顧客に対するサービス提供が十分に行えなくなるという問題も生じるため、企業にとってメリットはありません。
 一方、顧客から正当なクレームがなされることもあり、顧客からの強い要求をすべてひとまとめにカスハラとして対応すればいいというものでもありません。

2 会社のカスハラ対応すべきこと
 そもそも、カスハラ事案が発生した際に、会社が当該事案を把握できていないといけません。
 そのため、カスハラと思われる事案が発生した際に各従業員に報告義務を課す必要性があります。
 このときには、正当なクレームか否かを問わず、すべての事案について報告させるべきです。
 そうでなければ、個々の従業員の判断で事案を処理することとなってしまうため、カスハラ事案として取り扱わないとならないものに長時間対応してしまうといった、望ましくない状況が発生しえます。
 その後の、会社の具体的な対応については、ケースを分類して対応を類型化しておくのがいいのではないかと思われます。
 具体的には、脅迫、威厳を用いる型(「俺は○○だ。」、「○○に言うぞ。」などというパターン)、セクハラ型は、担当者を変更するといった対応を、過剰な要求、応じられない要求をされる場合は理由とともに淡々と対応をできないことを伝えるといった対応をすることになります。

3 会社として対応が困難なケース
 中には、会社が対応をすることができない事案が出てきます。
 何度も要求を拒否しても引き下がらないどころかむしろエスカレートする、退去を求めても退去しないといった事案は、会社として対応が不可能であり、むしろ対応すればするほど状況が悪化するとともに、担当者がどんどん疲弊することになります。
 このような場合には、警察を呼ぶ、対応窓口を弁護士に変更するといった対応をしなくてはなりません。
 対応に困る案件が発生した場合はもちろんのこと、事前のカスハラ対策の体制構築、従業員に対する研修の実施も含めて、是非ともご相談ください。

定年後の給与、どこまで下げられる?-中小企業のための再雇用制度改革ガイド-

(質問)
 高年齢者雇用安定法の経過措置が本年3月末日をもって終了し、4月1日以降は希望者全員を継続雇用の対象としなければならないとのことですが、その際には定年前とは異なる職務内容での再雇用契約は可能でしょうか。
 また、職務内容の変更に伴い、賃金を調整することは問題ないのでしょうか。

(回答)

1 2025年4月、全企業に突きつけられる課題
 「うちのような小さな会社でも、希望者全員を65歳まで雇わないといけないの?」「今の給与を維持するのは難しいけど、どこまで下げていいの?」――。
 こうした中小企業経営者の不安の声が高まっています。
 高年齢者雇用安定法(以下「高年法」といいます。)の経過措置が2025年3月31日で終了し、同年4月1日以降、規模に関係なく全ての企業で、原則として希望者全員を65歳まで継続雇用しなければならなくなるためです。
 高年法では、65歳未満の定年制度を導入している会社に対して、①定年の引上げ、②継続雇用制度(再雇用又は勤務延長)の導入、③定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じることを義務付けています。
 多くの中小企業では人員に余裕がないため、定年後の職務調整に特に悩まれることでしょう。

2 裁判例から学ぶ実務のポイント
 再雇用に伴う職務内容の変更や賃金引下げには一定のルールがあります。
 事務職から清掃業務への大幅な職種変更は違法とされ、労働時間の減少(約45%減)に比べて過度な賃金減額(約75%減)も違法と判断されています。
 一方で、課長職から一般職への変更に伴う賃金減額(月50万円から31.5万円)は適法とされた例もあります。
 これらの裁判例は、職務変更や賃金調整を行う際の重要な指針となります。

3 中小企業ならではの再雇用のアイデア
 大企業と違い、中小企業には柔軟な対応が可能というメリットがあります。
 例えば、以下のような工夫が考えられます。
 ○多能工型:複数の業務をこなす「なんでも屋さん」として活躍
 ○社外派遣型:取引先への派遣により、橋渡し役として活用
 ○時短・隔日型:繁忙期中心のパートタイム勤務で対応
 特に熟練工や営業のベテランは、その経験を活かして協力会社や取引先との関係強化に貢献できる貴重な人材です。
 大企業のような細かな役職にとらわれない分、柔軟な活用が可能です。

4 現実的な賃金設計のヒント
 賃金面では、基本給の4割減を目安としつつ、固定給と変動給の組み合わせ(例:基本給7割+実績給3割)や、短時間勤務との組み合わせ(週3日勤務で給与6割)など、柔軟な対応が可能です。
 職務を限定することで、給与水準の調整も行いやすくなります。
 重要なのは、一律の賃金カットを避け、個々の従業員の能力や経験、担当業務に応じた適切な処遇を設計することです。
 例えば、若手の育成担当には「技能伝承手当」を設定するなど、新たな役割に応じた手当を創設することで、モチベーションの維持を図ることができます。

5 中小企業の強みを活かした人材活用
 2025年4月の制度変更は、一見すると負担増のように思えますが、規模が小さい分、個々の従業員の経験や技能を把握しやすく、きめ細かな配置が可能です。
 ベテラン社員の持つ業界独自の暗黙知や取引先との人間関係は、代替の難しい貴重な資産です。
 例えば「週3日は若手指導、残り2日は得意先回り」といった柔軟な働き方を設計することで、会社にとっても働く側にとってもメリットのある再雇用制度を作ることができます。

6 まとめ
 人手不足が深刻化する中、シニア人材の活用は中小企業にとって生き残りのカギとなるかもしれません。
 2025年4月の制度変更を、自社の強みを見直し、新しい働き方を創造するチャンスと捉えてみてはいかがでしょうか。
 高年齢者雇用確保措置についてお悩みの方は、弁護士等の専門家にご相談されることをおすすめします。

令和7年4月1日の施行の育児介護休業法の改正のポイントとその対応

2025年育児介護休業法の改正
 ご存じの経営者の方も多いと思いますが、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、育児介護休業法等の法改正が行われ、令和7年4月1日から段階的に施行されます。
 改正法には、令和7年4月に施行されるものと令和7年10月に施行されるものがあり、このうち、令和7年4月1日に施行されるものは、次に挙げる9項目になりますので、改正法の施行までに改正法の内容を理解して、必要な対応をしなければなりません。
 そこで、今回は、令和7年4月1日の育児介護休業法の改正のポイントとその対応について、お話しします。

(改正のポイントとその対応)

1 子の看護等休暇
 現行法では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その申し出により、病気やケガをした子の世話、子の予防接種・健康診断のために1年間に5日(子が2人以上の場合は10日)を限度として休暇を取ることが認められていました。
 改正法では、小学校第三学年終了前の子まで対象が拡大され、休暇取得事由には感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式、卒園式が追加され、名称も「子の看護等休暇」に改められました。
 また、労使協定による継続雇用期間6か月未満の労働者を除外できるという規定が削除されました。
 要するに、子の看護等休暇の取得できる場面が拡大します。
 育児介護休業規程などの就業規則を定めている場合は、規則の見直しが必要です。

2 所定時間外労働の制限(免除)の対象拡大
 現行法では、3歳未満の子を養育する労働者が請求した場合には、所定労働時間を超えて労働させてはならない(ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。)と定められていますが、改正法では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者まで請求可能となる範囲が拡大されます。
 これも就業規則の見直しが必要です。

3 短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加
 改正法では、短時間勤務制度(育児休業を取得せずに3歳未満の子を養育する労働者が希望する場合、1日の所定労働時間を6時間に短縮する(または6時間を含む複数の時間を選択肢とする)措置)の代替措置として、新たに在宅勤務等をさせる措置が追加されました。
 これは、短時間勤務制度を講じることが困難と認められる業務に従事する労働者がいる場合に、労使協定を締結し除外規定を設けたうえでの代替措置ですが、選択肢が広がることになります。

4 育児のためのテレワーク導入
 3歳未満の子を養育する労働者が在宅勤務等を選択できるように措置を講じることが、事業主に努力義務化されます。

5 育児休業取得状況の公表義務適用拡大
 現行法では、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回インターネット等で公表することが、従業員が1000人を超える企業の事業主に義務付けられていましたが、改正法では従業員が300人を超える企業にも公表が義務付けられました。
 厚生労働省によれば、同省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」での公表が推奨されています。

6 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
 改正法では、介護休暇を取得できる労働者に関して、労使協定による継続雇用期間6か月未満の者の除外規定が廃止されます。
 これも労使協定、就業規則の見直しが必要になります。

7 介護離職防止のための雇用環境整備
 改正法では、介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主には研修の実施、相談窓口の設置、介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供、利用促進の方針の周知を行うことが義務付けられました。

8 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
 改正法では、事業主は、介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、介護休業の取得・介護両立支援制度等の周知と利用の意向の個別の確認を行うこと、介護に直面する前の早い段階(40歳等)での介護休業制度等に関する一定事項につき情報提供をすることが義務付けられました。

9 介護のためのテレワーク導入
 改正法では、要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが努力義務化されます。

10 家庭を顧みずに働く時代の終焉
 今回の法改正は、仕事よりも子育て等を重視するものです。
 時代の変化とともに、女性の社会進出、子育てと仕事の両立という観点から、誰しもが家庭を顧みずに仕事をすべきだというかつての時代は終わりを告げています。
 人手不足等で、育児よりも仕事を優先してもらっていた企業では、改正法に即した社内ルールの変更が必要になります。
 法改正に備えた対応ができていない企業においては、改正法の詳細につき、厚生労働省のホームページを確認したうえで、対応しなければなりません。
 育児介護休業法に限らず、法改正に合わせた規程の見直し、人事労務に関する法律問題でお困りの際には、弁護士にご相談ください。

~養育費を支払ってくれない!!~

(質問)
 XはYと令和4年3月に調停離婚しました。
 XY間には4歳の男の子がいます。
 調停調書には、YはXに対し、長男の養育費として、令和4年4月から長男が20歳に達するまで月額5万円を毎月1日に支払う旨の条項があります。
 Yは令和6年6月分までは毎月の養育費を支払ってくれていましたが、7月以降支払ってくれず、家庭裁判所に履行勧告の申立てをしましたが、Yは応じてくれません。
 同年11月現在、XはYの給料の差押えを検討しています。
 今回の事例の場合、Yの給料を差押えるは可能でしょうか。
 仮に可能な場合に養育費の不払がある度に毎月強制執行の申立てをしなければならないのでしょうか。

(回答)

1 養育費とは
 養育費とは、子どもが社会人となり、自立するまでの衣食住、教育及び医療等に要する費用のことをいいます。
 この養育費については、分担義務が民法上定められています。
 父母が離婚していない場合には、婚姻費用として、相手方に請求でき(民法760条)、離婚していれば、子どもの監護費用として親権者にならなかった相手方に対して養育費の支払を請求することができます(民法766条1項)。
 相談事例は離婚後の養育費なので後者にあたります。

2 養育費不払いの給料差押え
 養育費は、養育費支払義務者が任意に養育費を支払ってくれない場合には、強制執行が可能です。
 相談事例の場合、調停調書に養育費が定められていますので、家事事件手続法「別紙第二に掲げる事項」に該当し、審判と同一の効力である執行力のある債務名義と同一の効力が認められることになります(家事事件手続法268条1項括弧書き)。
 したがって、執行文の付与が必要なく強制執行できます。
 そして、給料を差し押さえる場合、原則4分の1とされていますが、養育費の不払いで給料を差し押さえる場合には、給料から税金と社会保険料等を控除した金額の2分の1まで差押えが可能とされています(民事執行法152条3項、151条の2第1項)。
 強制執行は、原則として期限が到来している債権でなければ執行が開始できません(同法第30条1項)。
 しかし、養育費のような少額の定期金債権を通常の債権と同様に扱うと、毎月不履行がある度に強制執行を申し立てなければならず、費用倒れとなる可能性があります。
 そこで、毎月一定額を支払う養育費のような債権は、確定期限の定めのある定期金債権に該当し、一部不履行があるときは、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができるといった民事執行法上に特別な規定が設けられています(同法151条の2第1項)。

3 相談事例の検討
 Yは、Xに対し月5万円の養育費を令和6年5月以降支払わず、同年11月現在では不履行の養育費が25万円となっています。
 この25万円の部分は履行期到来後の債権となります。
 そして、12月分以降の養育費については、期限が到来していない定期金債権として、差押えを開始することができることになります。
 もっとも、差押えが可能となるのは、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料のみです(同法151条の2第2項)。
 すなわち、将来分の養育費については、支払日が毎月1日であり、Yの給料日が毎月20日であれば、12月分の養育費は、12月20日に支給される給料から取り立てることになります。

4 最後に
 養育費の不払いで給料を差し押さえるためには、養育費支払義務者の勤務先が特定されていなければなりません。
 勤務先が特定されていない場合には、市町村や年金事務所等に第三者情報取得手続などをして勤務先を特定する必要があります。
 養育費の不払いなどで、お困りの際は早めに弁護士等の専門家に御相談ください。

経営者必見!育児・介護休業法改正-新しい働き方時代の幕開け

(質問)
 当社では、育児・介護休業法改正に備えて準備を始めたいと思っていますが、不足がないか心配です。
 主な変更点と対応策について教えてください。

(回答)
 2025年4月(一部は10月)施行予定の育児・介護休業法により、働き方が大きく変わります。
 この改正は中小企業にも重要な影響があるため、今のうちから準備を始めていくことが大切です。
 以下では、主な変更点と対応策についてご説明します。

1 子育て世代への支援強化
 残業免除の対象が、現在の3歳未満の子を持つ従業員から、小学校就学前の子を持つ従業員まで拡大されます。
 これにより、保育園の送迎や子どもの急な発熱など、予期せぬ事態に柔軟に対応できる環境が整います。
 子の看護休暇の対象も拡充されます。
 現行では子どもの病気やけがの看護のみが対象でしたが、改正後は学校行事への参加なども対象になります。
 年間5日(子どもが2人以上の場合は10日)の範囲内で、より柔軟な取得が可能になります。
 これにより、保護者会や運動会といった重要な学校行事にも参加しやすくなります。
 さらに、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、柔軟な働き方を実現するための措置を講じることが求められます。
 具体的には、始業時刻等の変更、テレワーク(月10日以上)、短時間勤務、新たな休暇の付与(年10日以上)、その他の措置(企業内保育施設の設置運営等)から2つ以上を選択して提供することが義務付けられます。

2 介護離職防止のための施策
 現在、勤続6か月未満の従業員を労使協定により介護休暇の対象外とすることが可能でしたが、改正後はこの除外規定が廃止されます。
 入社直後の従業員でも、必要に応じて介護休暇を取得できるようになります。
 また、家族の介護をする従業員に対するテレワーク推進が新たに努力義務となります。
 テレワークの導入は、介護中の従業員の負担軽減だけでなく、企業全体の業務効率化にもつながる可能性があります。

3 従業員への周知・配慮の強化
 従業員から妊娠・出産や家族の介護について申し出があった場合、各種制度を個別に説明し利用意向を確認することが新たに義務付けられます。
 これにより、従業員が利用可能な制度を確実に把握できるようになります。
 また、40歳に達した従業員に対し、介護休業制度等の仕事と介護の両立支援制度の情報提供を行うことが新たに義務付けられます。
 この年代は親の介護について考え始める時期でもあり、早めの情報提供は従業員の将来設計に大きな影響を与える可能性があるためです。

4 その他の重要な変更点
 常時雇用する労働者数が300人を超える事業主には、育児休業等の取得率または育児休業等と育児目的休暇の取得率の合計の公表が義務付けられます。
 また、従業員数100人超の事業主は、行動計画策定時に育児休業等の取得状況を把握し、数値目標を設定することが新たに義務付けられます。

5 改正に向けての準備
 まず、現行の社内規定や制度を洗い出し、法改正との差異を明確にしましょう。
 次に、優先順位をつけて対応策を時系列で整理し、必要な設備投資やシステム改修の費用を試算します。
 従業員の意識調査を行い、ニーズを把握することも大切です。
 可能なものから順次制度を導入し、フィードバックを得ながら調整していくことをおすすめします。
 また、改正の趣旨や新制度について社内で丁寧に説明することが重要です。

6 まとめ
 この法改正は、従業員のワークライフバランス向上と、企業の人材確保・定着に寄与します。
 準備は大変かもしれませんが、これを機に働きやすい職場環境を整えることで、結果的に生産性向上や競争力強化につながるはずです。
 今回の改正は、従業員にとって、そして求職者にとって「選ばれる会社」になるチャンスです。
 早めの準備で、円滑な制度導入を実現させましょう。
 育児・介護休業法改正への対応についてお悩みの方は、弁護士等の専門家にご相談されることをおすすめします。

固定残業代について行うべきこと

(質問)
 当社では、45時間分の固定残業代を支払っていました。
 しかし、今となって退職した従業員から、固定残業代の説明は受けておらず、実際に支払われてもいないと言われました。
 会社としてはどのように対応すべきだったのでしょうか。

(回答)

1 固定残業代について想定されるリスク
 残業代を請求された場合に、固定残業代が認められるか否かは最終的な支払い額に大きな影響を及ぼします。
 固定残業代が認められた場合には、固定残業代相当額はすでに残業代として支払ったという扱いになります。
 一方、固定残業代が認められない場合には、残業代について全く払っていないという扱いになるだけでなく、本来固定残業代とされている部分についても基本給として扱われたうえで残業代の計算がされることになります。
 したがって、請求される残業代はかなり高くなってしまいます。
 このようなことを回避するためにも、固定残業代の有効性はきちんと確保しておく必要性があります。

2 固定残業代の有効性
 固定残業代が残業代として有効に認められるためには、労使間において固定残業代についての合意がなされていることに加えて、賃金を支払うにあたって、給与明細等にて、基本給と残業代部分とが明確に分かれていることが要求されています。
このようなことが要求されているのは、従業員が自己の労働に対して残業代が支払われているかを確認することができるようにするためです。
 固定残業代を定めることで、所定時間内の時間外労働をした従業員に対しては合意した固定残業代を支払えば、残業代の未払いにならないため、労務管理に資するというメリットがあります。
 もっとも、所定時間(相談者の場合は45時間)を超過する部分の残業代については、きちんと残業代を再計算して支払わなくてはならないため、その点は注意してください。

3 労働条件通知書の重要性
 固定残業代については就業規則に定めたうえで、個別の労働者に応じて金額を定めることになると思われます。
 この際に当該従業員の労働条件の内容を客観的に示すものが労働条件通知書です。
 法律上、労働条件通知書は交付義務が定められているのみで、従業員の署名押印は要求されていません。
 しかし、残業代請求をされる際には、労働条件通知書の交付がなかったとして、合意の内容を争ってくるパターンがあります。
 したがって、そのリスクに備えて、従業員に労働条件通知の内容を確認してもらったことを証する署名押印をしてもらうことが一般的です。

4 事前の対応の重要性が高い
 以上のとおり、固定残業代の有効性については、事前に対応していないことにリスクが非常に大きいです。
 経験上、裁判上の手続で残業代請求をされた場合、かなりの事案で会社にとって不利な結論となっています。
 そのため、固定残業代の運用や、雇用契約書、就業規則や労働条件通知書について見なおしてみるのはいかがでしょうか。
 具体的な内容等の相談は是非専門家にしてください。

~民法改正「共有の変更・管理について」~

(質問)
 民法の共有に関する規定が令和3年に改正がされ、令和5年4月に施行されたと思います。
 特に実務で問題となる共有の変更・管理の部分について、改正の経緯や内容、今後の課題などを詳しく教えていただきたいです。

(回答)

1 改正前の問題点
 「共有」の制度は、複数の人が同一の財産を共有することを規定しており、共有の変更・管理については、民法251条および252条で規定が置かれています。
 旧法の251条は、共有物の変更はすべての共有者の同意がなければできないと定めるのみでした。
 また、旧法252条では、共有物の管理に関する事項は、持分価格の過半数で決し、保存行為は各共有者が行うことができる旨規定するのみでした。
 このように規定の内容が不明確であることから、実務上、以下のような問題が生じていました。
 まず、共有者間での意思決定の困難さです。
 共有者が増加すると、全員の同意を得ることが困難になり、特に相続によって細分化された土地では、管理や処分が難航するケースが多発していました。
 次に、土地の放置として、共有者の中に意思疎通が取れない人がいる場合や、意図的に協議を拒否する者がいると、土地が放置されることが多くなり、土地の有効利用が阻害されるという問題も生じていました。
 さらに共有関係の紛争として、土地の使用方法や管理を巡る共有者間の紛争が頻発し、その解決には多大な時間とコストがかかるという問題も起こっていました。
 これらの問題を解決するために、共有物の管理等についてのルールを緩和し、土地の有効活用を促進するための制度的改善が求められていました。

2 共有物の変更・管理規定の改正について
 ⑴共有の変更規定(同法251条)
 改正法は、原則として共有物を変更する場合には、共有者全員の同意が必要となりますが、共有物の形状・効用に著しい変更をもたらさない場合は通常の管理と同じようにみなされ、過半数の同意で足りると規制が緩和されました(民法251条1項括弧書き)。
 さらに、一部の共有者又はその所在が不明の場合においては、裁判所の決定により共有物の変更を可能とする規定が新たに設けています(同条2 項)。
 この改正により、共有者全員の同意がない場合や、共有者に所在不明者がいた場合であっても一定の変更行為がおこなえることになりました。
 ⑵共有の管理規定(同法252条、同条の2)
 改正法は、共有物を事実上使用する共有者がある場合においても、持分の価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定できることになりました(同252条1項)。
 また、一部の共有者又はその所在が不明の場合及び一部の共有者が共有物の管理に関する事項についての賛否を明らかにしない場合においては、裁判所の決定の下に共有物の管理に関する事項の決定を可能とする規定が新たに設けられました(同条2項)。
 さらに賃貸借等の権利のうち共有物の管理として設定できるものを明らかにしています(同条4項)。
 加えて、共有物の管理者の設定や義務についての規定も設けられました(252条の2第1項・3項)。
 この改正により、共有物の管理について、共有物の使用者に対しても、その使用事項を過半数で決めることができたり、使用権の存続期間の長期化を防ぐことができるようになりました。

3 私見
令和3年の民法改正は、共有物の管理や使用における意思決定を円滑化し、特に土地の有効活用を促進するための重要な一歩です。確かに少数派共有者の権利を保護する必要性は軽視できません。
 しかし、少数派共有者の権利を重視しすぎることによって、土地の活用方法や処分などが実現出来ないことは社会全体で考えると経済的な不利益が大きいといえます。
 所有権絶対の原則が尊重され、私的財産の保護を重視すぎることによって、実務において、上記の「1 改正の前の問題点」のような問題が生じていました。
 今回の改正によって、一定の場合には裁判所が関与し、少数派共有者の権利を制限することができるなど、所有権絶対の原則が緩和されたことは、実社会に即した重要な改正であると言えるでしょう。
 共有やその他土地の権利関係でお困りの際は早めに弁護士等の専門家に御相談ください。

知って守ってフリーランス新法-企業に与えるインパクト-

(質問)
 令和5年5月に公布されたいわゆるフリーランス新法が、令和6年11月に施行予定であると聞きました。
 フリーランスに業務を委託することがある企業として、注意すべき点を教えてください。

(回答)

1 そもそもフリーランスとは?
 皆さん、「フリーランス」という働き方をご存じでしょうか。
 フリーランスとは、特定の企業に属さず、自身の専門スキルを活かして複数のクライアントと直接業務委託契約を結び、独立して仕事を行う働き方のこと又はそのような働き方をする者をいいます。
 クリエイティブ分野のライターやデザイナー、IT業界のプログラマーやエンジニア、コンサルタントや個人講師、独立した士業など、フリーランスの世界は多岐にわたります。
 この働き方は高い自由度が魅力ですが、収入の不安定さや社会保障面での課題もあります。
 そのため、フリーランスの保護のあり方が長年政府で議論されてきました。

2 フリーランス新法の概要
 そのような中、フリーランスと委託者間の取引適正化と就業環境整備を目的に、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が制定されました。
 本法は「特定受託事業者」(フリーランス)を、従業員のいない個人事業主や、代表者以外に役員・従業員のいない法人で業務委託を受ける事業者と定義しています。
 このように、フリーランス新法は、多様な業種・形態のフリーランスを広く保護対象としています。
 このことから、本法は下請法や労働法規制に精通した大企業よりも、従来は下請法の規制を受けなかった中小企業により大きな影響を与えると予想されます。

3 フリーランス新法の内容
では、フリーランス新法の具体的な内容についてみていきましょう。
⑴ 下請法と同様の規制
委託者は、
①契約条件明示:フリーランスに業務委託後、委託者名、日付、業務内容、報酬額、支払期日等を含めた契約条件を直ちに書面や電磁的方法で明示しなければなりません。
②報酬支払期限:給付受領日から60日以内、再委託の場合は元委託支払期日から30日以内に報酬を支払わなければなりません。
③不当な報酬減額等の禁止:フリーランスの責任によらない報酬減額、受領拒否、返品等はできません。
 また、著しく低い報酬の設定(買いたたき)もできません。

⑵ 労働者類似の保護
委託者は、
①契約解除・不更新の予告:フリーランスと6か月以上継続する業務委託をしている場合、当該契約を解除するとき解除又は契約を更新しないときは、その30日前までには予告しなければなりません。
②ハラスメント防止措置:フリーランスに対するセクハラ、パワハラ及びマタハラに関する相談体制と適切な対応措置を整備しなければなりません。
③育児・介護等への配慮:フリーランスの申し出に応じ、妊娠、出産、育児及び介護と業務の両立に必要な配慮を行わなければなりません。
④募集情報の的確表示:フリーランスの募集情報を提供する際は、虚偽表示や誤解  を招く表示を避け、正確で最新の情報を提供しなければなりません。

4 法律違反への制裁
 委託者にフリーランス新法違反の疑いがある場合、フリーランスは行政機関にその旨を申告することができます。
 公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働大臣が段階的に対応し、助言指導から始まり、必要に応じて勧告、命令、公表へと進みます。最終的に命令違反には上限50万円の罰金刑があります。
 ただし、このシステムには行政リソースの制約があるため、全案件への対応は困難であると考えられます。
 そのため、民事訴訟等の私法上の解決手段も重要な役割を果たすことになるのではないでしょうか。

5 まとめ
 デジタル化とリモートワークの広がりにより、フリーランスの重要性が高まっています。
 彼らの権利保護と才能活用のための環境整備は、日本の労働市場の重要課題です。
 フリーランス新法はこの環境整備を目指していますが、まだ過渡期で課題も多く残っています。
 法の適用や解釈に不安がある場合は、弁護士等の専門家への相談をお勧めします。

フリーランス新法による建設業に与える影響

(質問)
 フリーランス新法という法律が制定されるということを聞いたことがありますが、建設業においてはどのような影響が生じるでしょうか。

(回答)
 フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が今年11月1日に施行されます。

1 フリーランス新法による規制
 フリーランス新法は、下請法と同様に、事業者に対して報酬を減額したり、受領を拒否したりすることが禁止されています。
 そしてフリーランス新法は、個人事業主にとどまらず、代表者以外に役員がおらず、かつ従業員を使用していない会社も保護の対象となります(対象者を法律上「特定受託事業者」といいます。)。
 建設業においては、一人親方といった個人事業主や、小規模な会社との取引は頻繁にあるため、特にフリーランス新法について知っておくべき業界であるといえます。
 そして、下請法とは異なり、委託業者の資本金に関する要件(資本金1千万円以上)がないため、法人個人を問わず、特定受託事業と取引をするすべての人が法律違反に注意しなくてはなりません。

2 建設業において特に注意を要する事項
 特定受託事業者との業務委託契約は、契約条件(給付の内容、報酬の額、支払期日等)を書面又は電磁的記録で明示しなくてはなりません。
 口約束での契約は違法となります。
 もっとも、相手がフリーランス新法の保護の対象であるか否かを問わず、契約書を作成すべきであることは言うまでもありません。
 また、支払期日についても規制があり、特に再委託する場合には発注元からの支払いを受ける期日から30日以内に報酬を支払わなくてはならないことは特に注意が必要です。
 下請け、孫請けとして特定受託事業者に業務委託をする際には、この規制に注意しなくてはなりません。
 他に、契約の中途解約にあたっては解約日前30日前までに予告しなければならない、ハラスメント対応措置を取らなくてはならないなど、労働者類似の扱いを求める定めも存在します。
 業務委託の相手方も自社の従業員と同様の処遇としなくてはならないというということです。

3 法律に違反した場合には
 フリーランス新法に違反するような行為があった場合には、勧告、公表、命令と段階を踏んでなされ、命令違反をした場合には、50万円以下の罰金に処されることになります。
 他にも中小企業庁長官から法律違反がないかについて報告徴収・立入検査がなされることになり、これらに違反した場合も50万円以下の罰金に処されることになります。
 違法業者の烙印を押されないためにも法改正についてもきちんと把握する必要があります。
 ここだけでは話しきれない法規制が存在するため、契約書の作成含めて業務委託契約の際に気になることがあれば、いつでもご相談ください。

従業員承継について教えて!

(質問)
 Xは、岡山市で約30年間、ネジ加工をするA社を営んでいます。
 XはA社の100%株主であり、A社の従業員は約40人で、経営状態も安定しています。
 Xは来年還暦を迎え、子どもはおらず、身内もA社では働いていません。
 XはA社を存続させるためにA社の従業員への事業承継を考えています。
 従業員承継についてアドバイスをいただけないでしょうか。

(回答)

1 事業承継の種類
 事業承継は、①現経営者の子どもをはじめとした親族に承継させる親族内承継、②親族以外の役員や従業員に承継させる従業員承継、③株式譲渡や事業譲渡等により社外の第三者に引き継がせるM&Aの3種類に分類されます。
 相談事例の場合、Xは②の従業員承継を検討していますので、今回は従業員承継について解説することにします。

2 従業員承継のメリットと留意点
 従業員承継の特徴としては、会社の中で経営者として能力がある人材を見極めて承継させることができることや、社内で長い期間働いている従業員であれば現経営者の経営方針等を理解し会社を存続させることができるというメリットがあります。 
 一方で、親族株主の了解を得ることが必要不可欠であることから、現経営者が現役で経営判断をしているもとで早期に親族間の調整を行い、関係者全員の同意と協力を取り付ける必要性があります。
 また、会社の資金問題や、他の役員や従業員との関係性にも留意する必要があります。

3 承継に要する期間
 従業員承継の場合、後継者を決めてから、後継者を育成し、事業承継が完了するまでの後継者へ移行期間する期間は、3年以上の期間を要する場合が多いと言われています。
 もっとも事業の内容によっては、10年以上の期間を要する割合も少なくありません。
 現在、日本の経営者の平均的な引退年齢が70歳前後であると言われていることを踏まえると、相談事例のように、Xは今年還暦を迎えるような場合、②従業員承継を検討するのであれば早々に、事業承継に向けた準備に着手することが望ましいといえます。

4 従業員承継の問題点
 株式会社は、会社に対して資金提供した出資者である株主が会社の所有者となり、株主総会で株主から選任された人物が経営者となります。
 これを、所有と経営の分離といいます。
 今回の従業員承継の場合、この所有と分離の問題をどう解消するかがポイントとなります。
 相談事例のケースで、会社の所有と経営が分離すると、後継者はXの意向に沿った経営しかできず、大胆な方向転換や経営改革をしにくくなります。
 また、他の従業員も後継者とXのどちらに従えばいいのか迷ってしまうことになりますし、Xが亡くなった場合、株式の相続でもめる可能性もあります。
 上記のケースを回避する手段として、後継者に株式を譲渡することが考えられます。
 もっとも、後継者が株式を取得するための資金を準備する必要があります。
 後継者個人が融資を受ける方法として、経営承継円滑化法に基づく認定を受け、日本政策金融公庫の融資がおすすめです。
 これにより融資を受ければ、後継者が経営者となった後、役員報酬や配当金収入から融資を受けたお金を返済することができます。
 また、同法には、中小企業信用保険法の特例として、信用保証協会の債務保証が経営承継関連保証として別枠化されているため、会社が信用保証協会を利用し金融機関からの資金調達も行いやすくなっています。

5 最後に
 事業承継は、企業を存続させるということは、社会においての経済的な役割を担うこと、そして既存の従業員たちの生活を守ることに繋がります。
 事業承継の方法について、どの方法が企業にとって一番よい方法なのかを見極めることが重要です。
 現在、事業承継を促進するための様々な制度改革が行われていますので、事業承継でお悩みの際は弁護士など専門家に御相談ください。